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病院における人事評価システムの費用対効果

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病院で人事評価システムを導入するか検討する際に、多くの経営層や人事担当者が気にするのが「費用に見合う効果が得られるのか」という点です。システム導入は決して安価ではありませんが、適切に活用できれば組織の効率化や人材定着に大きく寄与します。

本記事では、病院における人事評価システムの導入コストの目安、期待できる効果、そして費用対効果を見極めるための考え方を解説します。

人事評価システム導入にかかる費用

導入費用は大きく分けて「初期費用」と「運用費用」に分かれます。ここでは、医療機関向けの人事評価システム(18製品、2025年6月時点)の調査結果をもとに、相場を整理します。

初期費用の相場

システム導入時に一度だけ発生するコストです。主にライセンス購入、要件定義や評価項目の設計、画面カスタマイズ、既存データの移行作業、初期設定などが含まれます。

オンプレミス型 1,100,000円~
クラウド型 0円〜550,000円

オンプレミス型と明記していた製品は1件のみで、160名分のライセンス購入費用が含まれていました。クラウド型はライセンス購入を伴わず、アカウント利用料を支払う仕組みのため、初期費用が無料の製品が多い傾向です。なお、一部の製品で初年度分のアカウント利用料が初期費用に含まれているケースもありました。

※公式サイトで料金情報を公開している医療機関向けの人事評価システム(18製品)を調査し、各費用相場を算出(2025年6月時点・編集チームによる独自調査)。

運用費用の相場

システムを継続的に利用するための費用で、利用する職員数(アカウント数)に応じて変動します。多くの製品は「ユーザー課金制」を採用しています。

オンプレミス型 年額:約165,000円~
クラウド型(ユーザー課金) 月額:1名あたり100円〜1,650円
年額:1名あたり2,000円〜3,000円
クラウド型(スポット利用) 1回あたり66,000円(30名まで)

オンプレミス型は、初期費用に加えて毎年ライセンス費用の約15%が保守サポート費として発生します。クラウド型は主にアカウント利用料で、月額・年額・スポット利用の3パターンに大別されます。長期的には年額払いのほうがコストを抑えやすいケースが多く、一部のプランでは最低利用人数や基本料金が設定されているため、利用規模によって実質単価が変動する点に注意が必要です。

また、特殊なパターンとして「都度払いのスポット利用」が可能な製品もあり、短期間での試験導入や小規模利用に適しています。

※公式サイトで料金情報を公開している医療機関向けの人事評価システム(18製品)を調査し、各費用相場を算出(2025年6月時点・編集チームによる独自調査)。

病院が人事評価システムに期待できる効果

導入コストが発生する一方で、人事評価システムには多くの効果が期待できます。費用対効果を判断するためには、定性的な効果も含めて総合的に捉えることが重要です。

評価制度の透明性向上

システムを活用すれば、評価項目・評価履歴・フィードバック内容を一元管理できます。これにより属人的な判断が減り、公平性が高まります。結果として、職員の納得感や組織への信頼が向上します。

業務効率化によるコスト削減

紙ベースやExcelでの評価運用は時間と手間がかかり、ミスも発生しやすいのが現実です。システム導入により評価データの収集や集計が自動化され、人事部門の作業時間を大幅に削減できます。

浮いたリソースを教育や採用活動に振り向けられる点も大きなメリットです。

人材の定着と育成

評価制度が透明化すると「正当に評価されている」という実感が生まれ、離職率の低下につながります。さらに、評価データを活用してキャリアパスを提示すれば、職員の成長意欲を引き出しやすくなります。

医療の質の向上

チーム医療では多職種の協働が欠かせません。システムによって連携度合いやスキル状況を可視化できると、配置や教育計画が最適化され、患者対応力や医療サービス全体の質向上につながります。

費用対効果を見極めるポイント

システム導入を成功させるためには、単純に「コストが高い・安い」ではなく、効果を正しく見積もる視点が重要です。

1. 現状コストとの比較

まず、現行の人事評価にかかっている時間や人件費を算出しましょう。たとえば、人事担当者が毎年数百時間を評価作業に費やしているなら、そのコスト削減額とシステム費用を比較することで投資の妥当性が見えてきます。

2. 離職率の改善効果

離職が減ることによる採用コストの削減も大きな要素です。看護師1人を採用する際に数十万円のコストがかかる現状を考えると、離職率を1〜2%改善するだけでシステム費用を回収できるケースも少なくありません。

3. 定性的効果の評価

数字に表れにくい効果も無視できません。職員の満足度や患者からの信頼感は病院のブランド価値に直結します。こうした効果を総合的に加味することで、費用対効果の全体像が見えてきます。

導入時に注意すべき点

費用対効果を高めるためには、制度設計や運用の工夫も欠かせません。

現場の実態に即した設計

病院ごとに職種構成や業務フローは異なります。現場の声を反映させずに導入すると、機能を使いこなせず「宝の持ち腐れ」になるリスクがあります。

評価者教育の重要性

システムが導入されても、評価者が適切に運用できなければ効果は半減します。評価基準の理解やフィードバックスキルを高める研修とセットで導入することが望まれます。

長期的な視点での投資判断

人事評価システムは1年で効果が完結するものではありません。3年、5年というスパンで定着・改善を重ねることで真の費用対効果が得られます。

まとめ

病院における人事評価システム導入は、一見コスト負担が大きく見えます。しかし、業務効率化、離職率低下、人材育成、医療の質向上といった効果を踏まえれば、その投資は十分に回収可能です。

重要なのは、自院の現状を把握したうえで、定量的・定性的な効果を総合的に評価すること。これにより、費用対効果の高い導入判断ができ、長期的に持続可能な病院経営へとつながります。

人事評価システムは
自院の目的に適ったものを

「スタッフの頑張りを見える化したい」「主観的な評価から脱却したい」――。クリニック・病院で人事評価を導入する目的はさまざまです。

当メディアでは、制度づくり・マネジメント・評価データの活用という3つのフェーズに合った「医療向け人事評価システム」を厳選紹介。自院の目的に合った人事評価システム選びの参考として、ぜひご活用ください。

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