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人事評価のフィードバックと面談

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人事評価を有効に機能させるには、評価結果をもとにしたフィードバック面談が欠かせません。特に医療機関では、職種ごとの役割や期待が異なり、面談の進め方や内容の工夫が求められるためです。

本記事では、医療機関のフィードバック面談について、目的や進行手順、実践的なポイントを解説します。

医療機関における
フィードバック面談の目的

評価内容を共有しながら、自発的な行動変容を促すことが目的です。評価項目ごとの結果を説明しながら、具体的な行動のどこが評価につながったのかを丁寧に伝えます。

とくに病院やクリニックでは、日常業務が多忙で1対1の対話の機会が限られるため、フィードバック面談は貴重なコミュニケーションの場です。

フィードバック面談の効果

期待できる効果は大きく分けて2つあります。どちらも医療組織を育てるうえで欠かせない要素です。

1.人材の定着と離職率低下

人事評価の背景や根拠を明確に説明し、日々の行動とのつながりを示すことで、職員は自身の強みや改善点を理解し、評価への納得感を得やすくなります。

この納得感が、モチベーションや自律性を向上させ、職場への帰属意識や忠誠心を強化するのです。結果として、離職率の低下や安定した人材基盤の構築が実現されやすくなります。

2.チーム医療の土台作り

フィードバック面談は、業務上の悩みやキャリアの展望をすり合わせる絶好の機会です。上司に価値観や視点を共有することで、部下の心理的安全性は高まり、日常業務における報連相も活性化されます。

信頼を基盤とする対話が積み重なれば、医師・看護師・技師など多職種連携によるチーム医療の推進にも好影響を与えます。

フィードバックの難しさと重要性

医療機関では、業務の内容と専門性が異なる職種が混在するため、評価基準やフィードバック内容が抽象的になりやすい傾向にあります。納得感のあるフィードバックを行うには、「行動」「状況」「影響」をセットで言語化することが大切です。

例えば、「チームへの貢献度が高い」と伝えたとしても、何をもって「貢献」と判断したのか、その基準が伝わりません。一方、「患者の急変時に冷静な判断で医師に迅速に報告し、対応をリードしていたことが高く評価された」と伝えれば、自分のどの行動が評価されたのかが明確になり、再現性ある行動へとつながります。

フィードバック面談の進め方

効果的なフィードバック面談には、事前の準備と計画的な進行が不可欠です。話す順序や伝える内容の優先順位を明確にすることで、面談の質が大きく向上します。

面談前の準備

まずは評価シートや勤務実績、ヒヤリ・ハット報告、患者アンケートなどを整理し、フィードバック面談で取り上げるべき具体的なエピソードを抽出します。例えば、看護師であれば「急変対応時の判断力」、技師であれば「機器トラブル時の冷静な対応」など、それぞれの職種が担う役割をふまえた伝え方が大切です。

また、面談シナリオの作成も欠かせません。改善点やセンシティブな内容を伝える際、感情的な反発を招かないよう、具体的な行動と背景をセットで整理しておきましょう。

面談当日の流れ

医療機関では、現場の緊急対応や業務の合間に面談を行うケースも多いため、流れをシンプルにしながらも要点を押さえることが重要です。基本的な流れは以下になります。

  1. 評価内容の伝達
  2. 本人の意見を傾聴
  3. 今後の行動・目標設定

初めに評価の根拠を具体的な行動と結びつけて説明し、本人の意見や反応を聞いた上で改善点や期待を伝えると、双方向の納得感が高まります。面談の最後には、キャリアビジョンや役割期待をふまえて、次の行動や目標を設定しましょう。

話しづらい内容を伝えるときの工夫

ネガティブな内容を伝える際には、Iメッセージ(私は〜と感じている)を活用することで、相手を責める印象を和らげられます。また、「こうしてほしい」という期待を明確に添えることで、前向きな改善につながりやすくなります。

伝え方ひとつで受け取り方が大きく変わるため、言葉選びは非常に重要です。

職種別にみるフィードバックの留意点

医療機関では、職種ごとの専門性や責任範囲が明確に分かれており、それぞれが異なる視点と価値観で日々の業務に取り組んでいます。そのため、フィードバック面談も「一律の評価」ではなく、職種ごとの特性や立場に応じた対応が不可欠です。

ここでは、代表的な職種として、医師・看護師・医療技術者におけるフィードバックの留意点を解説します。

医師

診療の質や後輩への指導力、チーム医療への貢献度などの観点から評価を行います。

フィードバック面談では、成果や姿勢に対して敬意をもって接し、信頼関係を構築しましょう。上から目線での指摘は逆効果になるため、対話を重視しながら、組織全体の視点を添えて伝えることが大切です。

看護師

ケアの質や患者対応、多職種との連携など、日常業務の具体的な行動を根拠として評価します。

抽象的な言葉だけでは伝わりにくいため、「○○さんが不安そうだった患者様に自主的に声をかけていた」など、具体例を交えて伝えると効果的です。感謝や評価の言葉を添えるとより良いでしょう。

医療技術者

医療技術を専門的に担当する職種です。放射線技師や臨床検査技師、臨床工学技士など、チーム医療を支える重要な役割が挙げられます。

患者との接点が少ない分、評価されにくいと感じやすい職種なので、正確性・安全性・迅速な対応といった見えにくい貢献を意識的に評価しましょう。陰の努力がきちんと見られているという実感は、大きなモチベーションにつながります。

年次・経験値別にみる
フィードバックの留意点

年次や経験値によって、職員の捉え方や期待される役割は異なります。そのため、伝える内容は同じでも、アプローチの仕方を変えることが大切です。

若手職員

経験が浅く、自信を持てないケースも多いため、課題だけを指摘すると萎縮してしまう恐れがあります。そうならないよう、改善点は具体的に示しつつも、「この経験が次にどう活きるか」「成長につながっている」という視点を添えて伝えましょう。

例えば、「患者対応で戸惑った場面があったが、すぐに相談できた判断は良かった」というように、課題の中にも評価できる行動を見つけて伝えることが大切です。

ベテラン職員

長年の経験を重ねる中で、自身のスタイルや価値観を築いているため、単なる業務評価だけでは動機づけが難しくなる場合があります。

これまでの貢献に感謝を示しつつ、「後輩の育成」「職場全体への影響力」といった観点から役割拡大への期待を伝えることで、職員のモチベーションを維持しやすくなるでしょう。

フィードバック面談後のアクション

フィードバック面談は「伝えて終わり」ではありません。効果を最大化するため、フィードバック面談後にとるべきアクションを三点紹介します。

モニタリングとフォローアップ面談

現場のモニタリングを実施して、フィードバック面談で設定した目標や行動に対する進捗を追いましょう。必要に応じて声をかけることで、職員側も「見てもらえている」「応援されている」と感じやすくなります。

また、定期的にフォローアップ面談を実施して、目標達成状況やスキルアップ状況を確認し、ステップアップの計画を一緒に考えることも大切です。

面談結果を基に人事評価制度を改善

フィードバック面談を通じて得られた職員の声は、人事評価制度を見直す貴重なヒントになります。例えば、設定された行動目標が抽象的(例:チーム貢献の強化)でイメージしづらいという意見があれば、評価シートや目標記入欄の改善が必要です。

現場の実感に即した制度への調整は、運用の形骸化を防ぐだけでなく、「この制度は私たちのためにある」という意識を醸成し、職員の主体性を引き出すことにもつながります。

フィードバック文化を
根付かせる仕掛け

ピアレビュー(同僚間の評価)や簡易な振り返りミーティングを導入し、「上司からの一方通行」ではなく、日常的にフィードバックが行き交う環境づくりを進めましょう。フィードバックが特別な行為ではなく、日常の一部になれば、組織全体の透明性と心理的安全性が高まります。

人事評価のフィードバック面談で
押さえておきたいこと

フィードバック面談は、職員一人ひとりの成長を後押しし、組織の方向性と個人の行動を結びつける「対話の場」です。特に多職種が協働する医療機関においては、信頼関係の構築現場に根ざした目標設定が欠かせません。

「組織として質の高い医療を提供するために、人をどう育て、どう活かすか」を踏まえ、フィードバック面談を継続的に運用しましょう。

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